浸透圧性下剤 その2
- 2023/01/29
- 便秘の話
2)ラクツロース(糖類下剤)(商品名:ラグノスNF経口ゼリー)
特徴 ラクツロースは合成二糖であり,消化酵素によって分解されないためそのまま大腸内に到達し、浸透圧作用により腸管内に水分を引っ張ってくることで便を軟らかくします。 また別の作用として大腸内で腸内細菌により乳酸や酪酸などの有機酸に分解されることで、腸管内を弱酸性にすることで腸内環境を改善します。(悪玉菌は酸性環境が苦手)
メリット 酸化マグネシウムと遜色ない効果がある。 子供にも使える。 腸管から吸収されないため重篤な副作用がほとんどない。(腎臓や肝臓が悪くても使える) 腸内環境の改善効果があり、悪玉菌によるアンモニア産生を抑制して肝不全時の高アンモニア血症による精神障害を改善させる。 浸透圧作用による便の水分量増加と腸内環境の改善効果が見込まれます。
デメリット 値段が高価 酸化マグネシウム1g(平均的な1日量)17.1円に対してラグノスNFゼリー4包で182円 錠剤と違いゼリー状でかさばる、味の好みが分かれる。
どんな時に使う? この薬は1975年から小児の便秘や産婦人科の術後の便秘や肝不全の治療として使われていますが、一般的な便秘薬としてはなじみが薄いものでした。ちなみにアメリカでは学会のお墨付き(推奨度A)で一般的に使われています。日本では2018年に一般の便秘にも適応をもったラグノスNF経口ゼリーが発売され、選択肢が増えました。腎機能が悪く酸化マグネシウムが飲めない人、肝臓の悪い方の便秘、子供の便秘などが考えられます。服用後24から48時間後に効いてくるので即効性を求める人には向いていません。 効果はマイルドなのでこれ単独では難治性の便秘には厳しい印象があります。(個人の感想です)
値段と患者さんの状態を見極めて使うのが良いでしょう。
3)ポリエチレングリコール (商品名:モビコール)
特徴 便秘で便が硬い人は水分を多めに摂りましょうとよく言われます。間違いではありませんが、口から入った水分はその多くが小腸で吸収されてしまい全部大腸まで届くわけではありません。 便秘の方で水分をよくとるがおしっこばかり行きたくなって便は硬いままという方は結構みかけます。ポリエチレングリコールは水分と結合して、薬と結合した水分が吸収されることなくそのまま大腸にとどき便を軟らかくし、量を増やします。日本では元々大腸内視鏡などの前処置用の腸管洗浄液として使われていました。欧米では学会のお墨付き(推奨度A)であり、最も使われている便秘薬の1つになっています。日本では2018年にモビコールとして発売されました。
メリット 非吸収性でほかの薬との飲み合わせを気にしなくてよい。 薬剤耐性がないので連用しても効果は変わらない(但しその時の体調や生活習慣などで効果に変化あり)子供(2歳以上)から高齢者まで使える。 安全性が高く便の通りがよくなりスムーズな排便が期待できる。
デメリット 粉末で水に溶かす必要があり手間がかかる。 味の好みが分かれる。水で溶かすと塩味がきついことがありますが、ほかの飲み物で溶かするので味を変えることができる。(例:リンゴジュース スポーツドリンク など) 効果が緩やかなので(服用後1から2日で効果が出始める)即効性がない。 高価 薬価が2包(1日量)で167.2円
どんな時に使う? 酸化マグネシウムなど一般的な便秘薬を飲んでも便が硬い人や便が硬くて痛みのため排便を嫌がる小児などによい適応です。飲み始めの時は効果が出にくいのでレスキュー用に刺激性下剤やほかの便秘薬と併用することが脱落の予防になります。症状に合えば良く効き習慣性もないので使いやすいですが、高価なため費用対効果を考えて使用する薬です。