上皮機能変容薬
- 2023/06/11
- 便秘の話
今回は今までになかった新しい作用の薬です。
上皮機能変容薬ってなんやねんと思われるでしょうが、簡単に言うと腸管の粘膜上皮に作用して水分を腸管内に引っ張ってくることで、便を軟らかくして排便を促す薬です。
現在日本ではルビプロストン(商品名アミティーザ)とリナクロチド(商品名リンゼス)があり、効果は「慢性便秘症診療ガイドライン」にて推奨の強さ:1 エビデンスレベル:Aで学会のお墨付きがでています。
アミティーザ 効果 2012年に承認発売され、同じ便を軟らかくする効果のある薬の酸化マグネシウムより格段の効果があります。 海外の試験でも24時間内の自発排便の増加や排便時のいきみ、便秘の重症度も有意に改善しています。
腎機能の悪い人では酸化マグネシウムは高マグネシウム血症をおこすリスクがありますが、アミティーザでは認められていません。 刺激性下剤では長期連用による薬剤の習慣性もアミティーザでは見られません。 また飲み合わせの悪いくすりもありません。
副作用 主な副作用は下痢 悪心 腹痛などがあり特に悪心が多く、吐き気止めが必要なこともあります。 特に若い女性では悪心が起こりやすいとされています。 妊娠している女性には流産の危険性があるので絶対に使えません。
リンゼス 効果 2017年に承認発売され、アミティーザと同様に腸管内に水分を引き込んで便を軟らかくする他に消化管粘膜の内臓知覚神経の痛覚過敏性を抑えることで腹痛を改善する効果があります。 過敏性腸症候群の便秘型で腹痛を伴う人に向いています。 また高マグネシウム血症などの電解質異常や薬剤の習慣性もなく併用してはいけない薬もありません。
副作用 最も多いのが下痢です。ほかに悪心 腹痛 膨満感などがありますが頻度は多くありません。 リンゼスによる下痢は食事の影響を受けやすく、食事時間と服薬が近いと下痢が起きやすく食後は避け、食前30分前が理想的です。 またこの下痢はいきなり来るので使い始めは外出時などすぐにトイレに行けない時には注意が必要で、一日のうちいつ服用するかのタイミングも重要です。しかし服用しているうちに下痢が起きやすいかどうか、排便までの時間が分かれば調整は可能です。
まとめ 上皮機能変容薬は従来の薬では効果の少ない便が硬い人や腎機能が悪く高マグネシウム血症が心配な人により良い効果が期待できますが、薬価が高くコストパフォーマンスを考慮して使う必要があります。 薬の投与量やタイミングも重要で最初は少量から使い効果をみながら増量するのが無難です。 もちろん便秘のひどい人はこれだけでは出ないことも多く他剤との併用が必要な方も多いのが実情ですが、選択肢が増えたことはありがたいことです。