便秘に使える漢方薬 2

前回は構成生薬がシンプルなものを紹介しましたが、今回は構成生薬が多様で様々な効果を狙った薬を紹介します

1)麻子仁丸(ましにんがん) 構成生薬:麻子仁5.0g 大黄4.0g 枳実2.0g 杏仁2.0g 厚朴2.0g 芍薬2.0g(7.5g中 一日使用量相当)                                     大黄甘草湯と比べて構成生薬が6種類と多めですがそれぞれに意味があります。大黄が4.0gと漢方薬の中でも多めに入っており効果は強めですが、麻子仁と杏仁で腸を潤し便の滑りをよくする効果があり、枳実と厚朴は腹の張りに芍薬は腸の痙攣を和らげてくれます。大黄による効果を発揮しつつ刺激に伴う症状を緩和して使える幅が広がります。ただし大黄が多めなので常用量では効きすぎることがあるので最初は少なめから処方しています。            高齢の体力の衰えた方のコロコロした便でお腹の張った方に向いています。

2)潤腸湯(じゅんちょうとう)構成生薬:地黄6.0g 当帰3.0g 黄ゴン2.0g 枳実2.0g 杏仁2.0g 厚朴2.0g 大黄2.0g 桃仁2.0g 麻子仁2.0g 甘草1.5g (7.5g中 一日使用量相当)                                 なんかもう色々入っていますが当帰・地黄・麻子仁・桃仁・杏仁・甘草など、体をうるおす作用のある生薬が多く含まれており麻子仁丸と構成がにています。コロコロ便でカサカサな乾いた肌の人に向いています。乾いた腸内を潤すイメージです。麻子仁丸より大黄の量が少ないため、緩やかな効きかたが特徴です。大昔からある薬ですが、最近開発されたアミティーザやリンゼスといった上皮機能変容薬とよく似た効能を持っています。

3)桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)構成生薬:芍薬6.0g 桂皮4.0g 大棗4.0g  甘草2.0g 大黄2.0g 生姜1.0g(7.5g中 一日使用量相当)                     立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花と美人を形容する言葉にでてくる芍薬が6gと多めに入っておりこれは甘草と一緒にすることで筋肉のけいれんを和らげる効果があります。腸も平滑筋という筋肉でできているので腸管のけいれんする痛みにききます。緊張するとおなかが痛くなる過敏性腸症候群の下痢型や痙攣性の便秘に使います。また刺激性下剤を飲むとおなかが痛くなり下痢をするような場合、腸の緊張をほぐして少量の大黄で優しく刺激するような効きかたをしてくれます。

ここからは大黄を使わずに腸の動きを良くしたり、腸の緊張をとる作用で便をでやすくすタイプの薬です。

1)桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)構成生薬:芍薬6.0g 桂皮4.0g 大棗4.0g  甘草2.0g  生姜1.0g(7.5g中 一日使用量相当)                                                この薬は桂枝加芍薬大黄湯から大黄だけを抜いたもので純粋な下剤ではありませんが、腸の緊張をとる効果があるので過敏性腸症候群や痙攣性の便秘に相性がよく併用する便秘薬の効き目を良くすることが期待できます。また急性腸炎などで下痢をしておなかが渋り腹になっているときにも良く効く印象があり、下痢でも便秘でも使えるので当院ではよく処方しています。

2)大建中湯(だいけんちゅうとう)構成生薬:乾姜5.0g 人参3.0g 山椒2.0g 膠飴10.0g   (15g中 一日使用量相当)                                           乾姜 人参 山椒は体を温める効能があり、腸の血流を促進して腸管の動きを活発にします。また膠飴は麦芽糖からできた飴で腸内環境に良い影響を及ぼします。消化器外科の間ではちょっと昔から腸の動きを良くすることで腸の癒着を予防するとして、手術後の腸閉塞の予防に使われています。刺激性の下剤の常用で疲れ切った腸や弛緩性便秘で腸の動きが悪い便秘に補助的に使うといい仕事をしてくれます。                    実はこの薬しょうがと高麗人参と山椒と飴でできており食品に近いもので、妊娠中の便秘にも使えて重宝します。                しかしメーカー希望使用量としては1日15gとなっており、通常の2倍になっています。(多いわ!)この量では現実的ではないので一般的な7.5gでも十分効果はあるので状況に応じて使います。

便通改善に使われている漢方薬の代表的なものを紹介しました。漢方薬は証に合わせて使うことで驚くほど効果がでたり、また現代薬と合わせることでメインの薬の効きがよくなったりと診療の幅が広がります。

 

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